1.はじめに

 1987(昭和62)年、第1期ビハーラ会員の募集とともにビハーラの実践活動研究会を発足してより今日までに、既に12年の歳月を重ねた。その間、実践活動養成の修了者は649名を数え、各教区のビハーラ会員は、賛助会員3,000名を超えるまでに至っている。

 このビハーラ活動は、〈いのち〉を正しく見つめその尊厳性を保つために、多くの人びととともに協力し合って歩む新たな運動として、今や名実ともに教団の運動の主要な柱の一つであるといえる。特に、実践活動養成に、比重をおいたターミナル・ケアから広く「生老病死」の危機にかかわるケアへと軌道修正し、活動自体の幅が広がったことは大きな成果といえる。さらに、これまで教団には無関係とされていた医療関係者や学生等のビハーラへの参加によって、貴重な人材を確保することができたことや、阪神・淡路大震災に際して救援活動への参画は、ビハーラ活動における一方の実績として大きな成果といえる。

 しかし、この10カ年の取り組みを振り返ったとき、ビハーラ活動そのものは決して順風満帆の歩みではなく、常に試行錯誤を重ねた取り組みでもあった。

 そのことは、今日までの経過を振り返る中で、本来の宗教活動の色彩が薄れ、専門的な活動に偏りつつあるのではないかとの指摘や、各教区における現場では、特定の人が関わっているだけで、大多数の僧侶寺族は無関心であったという意見からも理解できる。さらに、ビハーラと本派社会福祉推進協議会の関係や、布教団・仏教婦人会・門徒推進員といった諸団体との関係は、充分調整をしてきたともいえない。

 ビハーラ活動は、類例を見ない急速な高齢化や少子化、家族機能の崩壊が進む極めて困難な現代社会にあって、基幹運動の理念である「信心の社会性の実践」として、私たち一人ひとりの〈いのち〉の尊厳を守り、全人格に暖かくふれ癒す活動であることは言を俟たない。

 このたび、発足より10カ年を経過した節目に、過去の歩みの「点検と評価」の作業を行うことは、まさに今日までの歩みを振り返り、課題を明らかにすることによって、この活動の充実とさらなる前進を目指すものである。

 ここに、「ビハーラ実践活動研究会専門委員会」の総括作業を経、「ビハーラ問題協議会」の議に基づき、以下の総括書として提出するものである。

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