二十一世紀の宗門のビハーラ活動

山口教区ビハーラ代表者 原谷 晃

 二〇〇〇年という節目の年を迎え、この記念すべき時に気持ちを新たに、今後の山口教区のビハーラ活動の方針をたてたいと思います。

  山口教区は、本州の一番西に位置します。寺院数は、六百三十八カ寺で、各寺院を地域ごとに組織する三十六組で成り立っています。

  ビハーラ山口の結成は、一九九二(平成四)年になりますが、発足当時は、本山での研修修了者五名からの出発でした。その後、協力会員の募集を行い、まず、仏教婦人会や若婦会の方がたが中心となり活動をしてまいりました。そして、その組織的な大きな力が原動力となり、また各組長さんの力を頂きながら現在に至ってます。さらに、能率の良い活動ができることを目的に、一九九七(平成九)年より教区内を四ブロックのエリアに分けました。エリア制の導入は、点(個人)、線(数人)、面(全教区)の全員が活動しやすい方法の一つでありたいという願いのもとに立ち上がりました。

  ビハーラの事務所を置く教務所におきましても、歴代の教務所長さんのご指導とご理解を頂き、また担当専従員の方がたのお力添えを得ながら、今日まで歩みを続けてまいりました。

  今後の活動としては、各エリア内にある病院や施設での活動の充実や、活動者の研修等についても考えていきたいと思っています。
 
  さて、この二年間、本山では「ビハーラ問題協議会」並びに「ビハーラ実践活動研究会専門委員会」を中心に、活動を振り返る集約の作業として、ビハーラ活動十カ年の総括を実施し、総局に対しまして答申がなされました。そして、一九九九(平成十一)年度より「第十一期ビハーラ活動者養成研修会」が再開されました。

  さらに組織の見直しが行われ、同年六月二十九日付の宗達第七号で「ビハーラ活動推進委員会設置条例」が発布され、それに基づき「ビハーラ活動推進委員会」が設置されて、同時に十五名の委員が選出されました。委員会では、ビハーラ活動発展に向け強力な推進がなされようとしております。また、ビハーラ活動推進委員会設置に関する法制化により、三部門の専門部会が設置されました。これより養成研修・活動ネットワーク・企画研究の各専門部会によってビハーラ活動の今後の方針が設定され、過去十年、社会部の所掌しますビハーラ活動は、法制化によって宗門内での位置付けは確固たるものとなりました。このネットワークを自発的にしろ主体的にしろ、最大限に活用してゆきたいものです。そしてビハーラ活動を担当する社会部は、研究・調査・要員の養成等を計画立案につきまして、実行できるよう事務的な面でのお力添えを期待します。特に、条例設置の目的である、教区における活動の連絡提携にかかわることですが、その活動は各教区による独自性のある活動が主体となります。それら活動のネットワークを社会部が掌握し、全国組織を成立させてくださるよう念願いたします。

  全国三十一教区と沖縄開教地を含めた三十二地域が、本山を中心として、各教区の異なる事情を統括していただくために、条例の制定は必要な措置と考えます。そのことによって、多少の上意下達の組織になるのではと心配されますが、私はそのようには思いません。平常時には各個人の活動が社会の中にあって、いかに信用性を高め広げてきたかがその事実をものがたっています。数人の活動者を組単位で組織し、その組織が近場のエリアを組織化する。その四つないし五つのエリアを教区が統括して、教区をブロック化する。そして現在、全国五ブロックの「連区」に分けている事実を効率よく活用するために、一年若しくは二年に一回のブロック(連区)集会を開催してほしいと思います。

  中国・四国の第四連区は、三年前の一九九七(平成九)年から、会員の集会研修を各教区持ち回りで開催しています。今日までの取組みの中で、成果は大変大きく感じられます。

  次に、二年間休止となっていた、ビハーラ活動者養成のための研修も、昨年から再開されましたが、今後も継続されることによって、二〇〇〇(平成十二)年四月から施行される「介護保険制度」導入に関して、社会からの要請にかなった活動の理念、そして研修カリキュラム等の計画がなされ、過去十年間の歩みの中で時代、又は社会の変化による問題点を洗い直してみなければなりません。

  そして今後、ビハーラ活動をより推進し、発展させるためには、その基盤となる大きな運営資金が必要となります。そのために本山からの支援を期待したいと思いますが、私たち教区ビハーラにおきましても、社会に向かって大きなかかわりを持てるセクションであり、自らの努力も必要であると考えております。
 
  さて次に、組・エリア・教区・第四連区の活動の様子を述べてみたいと思います。

  私の所属する組は、山口教区豊浦組といいまして、下関市の中にあり、寺院数は二十カ寺で成り立っています。現在、豊浦組の組長を務めていただいております妙光寺住職・東伯導氏に立ち上げの時にお力添えをいただき、組の中でビハーラ部会として位置付けることができました。そして、実際に活動いただく会員の募集につきましては、教区若婦会に呼びかけ研修活動を開始しましたところ、多くの会員の参加をみて、まず寺院において研修を年に一、二回開催し、多くの講師に出講を頂きました。その中には僧侶方はもちろん、医師の方がた、さらに社会福祉関係者も参画いただきました。特に医療関係者のご理解・ご支援は誠に大きく、今日まで継続してご協力いただいております。

  現在、教区内には、四カ所のビハーラ協力病院・施設があります。したがって各病院・施設に大変な協力を頂き、また理解を得ながらの活動でありますので、浄土真宗本願寺派の活動であることの誇りを内にひめながら、宗教を全面におしだして活動をしてはいけない側面をもっております。豊浦組としては、近隣組・近隣教区の見学研修・活動の理解を受け、今日まで「社会福祉法人松涛会安岡病院」「特別養護老人ホームはまゆう苑」の会長との深い人間関係、厚い信頼関係があってこそ、施設内でのビハーラ活動が許され、大きな成果を得ました。

  こうなりますと、病院・施設等のスタッフとの理解も可能になり、活動会員と話し合いを積み重ねて信頼がさらに深まります。その後、施設側からの提案により、週一回の介護研修会を開いていただき、その参加者は毎回五十名を越す熱心さで約一年間続けました。このことは、介護活動だけではなく、家庭内にあっても家族の介護に役立つからです。

  さらに注意していただきたいことは、このビハーラ活動は伝道活動を中心とした活動ではないということです。したがって、宗教色を前面に出して活動すると、施設はもちろん、患者の方がたにも誤解をまねきます。

  特に、法話会につきましては、施設病院等の責任者と話し合って、手順を踏んでから開いています。最初の頃は、入院患者さんの集まりは少数でしたが、今では多くの方がたがお聴聞に参加しています。その集まりに、ビハーラ会員が車イス介助の活動をしています。また、最近では法話会のご縁が広がり、家族の方も聴聞にご参加いただくため、わざわざ来院されるまでになりました。
 
  近くの組ばかりではなく教区全体、他教区の見学研修会が多くなりました。これは、受入れ側と活動参加者の関係に継続があるからです。これら活動者一人ひとりのたゆまない努力が、社会の中にあってこそ、ごく自然に受け入れられます。

  これからの二十一世紀は、予測もできない多くの家庭問題、社会問題があることをおもいますが、これに対応できうる活動者になっていきたいものです。

  最後になりましたが、第十一期以降の研修受講者の皆さま方の努力に期待しています。

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