1986(昭和61)年11月20日の『本願寺新報』は「ビハーラ(仏教ホスピス)研究会設置―現代社会の課題に対応」という見出で、「ビハーラ研究会」の発会を伝えた。その後、「ビハーラ活動を主体的に実践できるよう養成する」という養成目標を掲げ「実践・活動」の必要性ということの論議を集約し、「ビハーラ実践活動研究会」という名称で、会員募集に入った。その養成内容は「①病床に伏す人々(病院・在宅・施設)や家族などに対して、精神的介護能力を習得する②広範囲における介護に必要な基礎的能力を習得する」こととし、基本学習と実践学習とを行うというスタートであった。
会員募集の結果、僧侶51名・寺族1名・門信徒4名の第1期ビハーラ実践活動研究会会員であった。その後、第7期まで、門信徒の会員は10名台で、20名を超えることはなかった。
順次、ビハーラ実践活動研究会会員を募集したが、会費の徴収も会則も年度ごとの活動の取りくみを示すことはなく、当初より養成を終えた会員に対し、お互いに連携しあって、教区拠点を形成するよう呼びかけてきた。
「ビハーラ活動提要1996(平成8)年度版」の教区ビハーラ活動状況一覧表に見るように、ビハーラ実践活動研究会会員640名、その人たちを含めた教区会員は2,377名となっている。この結果、教区ビハーラにおいては、研究会会員と教区会員を峻別する必要性はなく、本山での養成をしたことを立証しているだけとなっている。むしろ、教区では研究会会員とそうでない会員を分けることは、一つも利するところはないといえよう。研究会会員とする理由は、現在では見出せなくなってきている。
1986(昭和61)年教学本部(現在の教学研究所)に「医療と宗教に関する専門委員会」が設置され、3年間毎月委員会を開いて『医療と宗教』を出版した。同じ1986(昭和61)年、ビハーラ活動発足を前提に「医療と宗教のかかわりについての会議」を2回開催している。その後、ビハーラ実践活動研究会の発足と共に、専門委員会を結んでスタートすることになった。その設置要綱は次のようになっている。
ビハーラ活動を展開する上において、各専門分野(医療・福祉関係者等)の委員より構成され、実践者の養成並びにその活動内容にかかる諸事項について協議するため組織する。
・委員は15名以内とする。
・委員は、医療、福祉関係者、教学関係者、基幹運動関係者、本活動の協力者、理解者の中から、総局が指名する。
・本委員会の委員の中から、座長を置く。
但し、所内関係局には、その都度案内する。
ビハーラ活動を展開する上において、各専門分野(医療・福祉関係者等)の委員より構成され、実践者の養成並びにその活動内容にかかる諸事項について協議するため組織する。
2会計年度とし、再任は妨げない
①ビハーラ活動実践者養成にともなう総合カリキュラム作成
②基本学習会の運営方法について
③実践学習会の運営方法について
④学習教材・資料調製について
⑤ビハーラ活動高揚に向けての広報用パンフレット調製について
⑥その他
以上の「ビハーラ実践活動研究会専門委員会設置要綱」が定められたころは、ビハーラ活動の発足当初であり、会員養成が当面の急務であったため、それ以外の取り組むべき課題については、具体的な活動が展開されていない状況下にあった。そして、「ビハーラ問題協議会」の設置に際して、問題協議会と専門委員会それぞれの協議事項を定めることとなったが、専門委員会の協議事項には、基本学習及び実践学習に関わる内容が多く、実践活動の内容については、全く含まれていない状況にあった。
しかし、事実上は学習による養成をすれば、当然実践活動上の様々な取りくみの問題が出てくる。それを補う会議体が、現在ある部分で関わりをもっている「ビハーラ専門委員会」であるのが実情である。また、ビハーラの教材やパンフレットも協議内容に記載されてはいるが、近年俎上に上がっていない。もちろん、それは新しいカリキュラム作成に取りくみが行われていたためであり、今後の取り組みが望まれている。
近年、カリキュラム編成、ビハーラ記録作成、ビハーラ教育、総括点検の重点4つのの取り組みを班ごとで検討を分担したが、ビハーラ教育については、今後取り組むべき課題が多い。
ビハーラ問題協議会は、ビハーラ専門委員会の後発でスタートしたが、ビハーラ活動をより強力に、そしてビハーラ活動の展開方向を明らかにすることにあった。特に、宗門内において強力に説得推進に当たり、宗門外に向かって強力なアピールが発揮される期待があったからである。ビハーラ問題協議会の設置要綱は次のようになっている。
宗門の重点施策であるビハーラ活動の推進にかかる諸問題を協議し、その態勢の確立をはじめ、進むべき方向性を明らかにするなど、必要な処置を講じるため、ビハーラ問題協議会を組織する。
委員は11名ないし13名とする。
委員は宗会議員・医療・福祉関係者・教学関係者・基幹運動関係者・本活動の協力者・理解者等の中から、総局が指名する本協議会の委員の中から、総局の指名した座長をおく。
本協議会にその庶務を処理するため、幹事を若干名おく。幹事は宗務所関係室局部長より選出する。
協議会は必要の都度、座長が総局の承認を得て招集する。
1会計年度とし、再任可能とする。
①ビハーラ活動の将来的展望並びに宗門体制について
②ビハーラ活動の宗門内外への普及及び啓発について
③医療施設、福祉施設等の協力者の発掘と連絡提携について
④ビハーラ活動実践者(以下ビハーラ会員という)の育成、組織化並びに位置付け及び教材作成について
⑤具体的実践とその範囲について
⑥他教団・他団体との交渉・連携について
⑦その他、ビハーラ活動推進にかかる必要な事項について
現行の専門委員会は存続させ、主にビハーラ会員の指導・育成・教材作成を分掌する。
この設置要綱が決められ1987(昭和62)年11月13日に発足してから、年月を経て、全教区にビハーラ組織ができ、約3,000名の会員がいる。組織も活動内容も大きくなっているのに対し、それに相応した協議が出来るようにすることが望まれるところである。
また、ビハーラ活動を宗務に円滑に乗せていくためにも、極めて社会対応が必要なこと・専門的分野の理解が必要なこと・緊急性を要するときの敏速にしてかつ適切な行動が必要なことである。そのため、担当職員については、それに応じることができるように、従来から専門資質を要求されてきたし、担当の事務および交渉等に見合った人数の職員確保が要求されており、担当の事務遂行、及び交渉等に見合った必要な人員体制を確保して、ビハーラ活動の事務をスムーズに進めたいことである。
他の組織活動団体と比較しても、ビハーラ問題協議会、ビハーラ専門委員会、教区ビハーラ代表者会(ビハーラ活動全国集会の受け皿団体という契機でできた会)があるが、今後具体的な活動推進に向け明文化すべきものでなければならない。