5.まとめ

 ビハーラ10年の歩みは、まさに仏教における根本的な「生老病死」の問題を、「ビハーラ実践活動」という現場を直視することによって、考え・語り・学び・実践することを可能にした極めて有意義な10ヵ年であった。

  そして何よりも今日までに、数多くの病苦にある人びとや、あるいは「死」を迎えようとした人びとにとって、お念仏に支えられてある喜びを、ビハーラ活動によって出遇い、その支えによって、どれほど勇気づけられ励まされ癒されたかは、計り知ることができないであろう。そのことは既に記述された「ビハーラ活動の現状分析」の大部の報告からも容易に理解できるものである。

  さて、1998(平成10)年3月14日より10期100日間勤められた蓮如上人500回遠忌法要も、同年11月13日の御満座をもって円成した。そして、御満座に際してご門主より「ご消息」が発布されている。

このご法要を通して、私どもの「いのち」を育む「環境」問題や「家族」について学びました。私どもの周辺には「いのち」の尊厳を傷つける問題が山積しています。み教えを学び、お念仏を申しつつ、自らの人生の課題として、これらに取り組んでいくことが宗門のすすめています基幹運動であります。

と、私たちの尊厳を傷つける問題の解決こそ、私たちお念仏を申す一人ひとり課題であり、これらに取り組むことが宗門の進める基幹運動であると受けとめていきたい。

  ひるがえって、このビハーラ活動の今後歩むべき方向は、〈いのち〉の尊厳を守り、全ての人びとと共に歩みながら、全人格的に暖かくふれ癒す活動を続けるということであり、そこにこそ、宗門の「人類永遠の福祉に貢献する」という究極の目的に叶うものであると考えるものである。

  そして、その実現のためには、前章で提言した「ビハーラ活動-今後の課題」の一つひとつを受け止め、財政上の裏付けや人的配置といった必要な措置を講じながら、ビハーラ活動の充実と前進を目指すべきであると結論づけたい。

  最後に、1997(平成9)年度と1998(平成10)年度の2カ年度は、ビハーラ活動を点検し展望するために、本山における実践者養成の研修を休止した。しかし、既に「教区ビハーラ」として組織づけられた各教区や各組のビハーラ活動の現場では、一時たりとも休むことなく続けられていることを考えると、今後より一層この2カ年の間に「総括」を行った成果をもとに、ビハーラ活動を推進し充実させていきたい。その活動こそ宗門が社会的に貢献をすることであり、社会的な責任を担うことになるものと考えからである。

  このたびまとめた『ビハーラ10カ年の総括書』が、宗門を構成する一人ひとりの「ビハーラを行動する」指針となり、その活動が広く社会に貢献する運動となることを願って止まない。

以  上

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