現在のビハーラ会員は、どのような動機づけによって実践活動をされているのでしょうか。動機はきわめてその後の活動姿勢を生み出す大切な要件だからです。10年前の調査では、圧倒的に「家族の死」「近親者の死」でしたが、今回は「いまの時代に大切な活動だから」と、ビハーラ活動の意義を認識自覚した動機になっています。もちろん複数回答の選択でしたから、死や病気といった動機が第一に、次いで「大切な活動」「ビハーラ活動者のすすめ」を第二に選んだとも考えられます。
今回の調査と前回調査との間には、設問に対する選択項目の内容が異なるため単純比較はできませんが、次のようになっています。「死や病気の機縁」で関わる人が最も多く、次に「ビハーラ活動の意義」を認めて「社会的な使命感」をもったことが動機となっている点では、同じ傾向でした。
(1996年2月「第4回ビハーラ活動全国集会」(安芸教区実施の事前調査)
このような動機をもってビハーラ活動に関わった人たちは、ビハーラ組織と関わって活動しているか、または関わらないで活動しているのでしょうか。前回調査と今回調査を円グラフにしてみました。
(1996年2月「第4回全国集会」」事前調査)
(2009年1月「第13回全国集会」)
明らかに今回の調査で、ビハーラ組織の一員として活動している人の率が多くなっています。ビハーラ内の小グループでも増えていますから、ビハーラ組織の方で受け入れ態勢があることや働きかけがあるためと考えられます。
それではビハーラ活動をどのような場所で、どのような活動をしているか、アンケートにしました。
その結果、
1.高齢者施設 93名
2.寺院 44名
3.病院 30名
4.在宅 18名
5.その他 19名
でした。寺院でのビハーラ活動が多かったのは、僧侶・寺族の回答者が多かったせいでしょうか。問題は、どのような活動を寺院でビハーラ活動をしているという結果になったかです。
「あなたはどのような活動をしていますか」という設問の結果は、下図の「ビハーラ活動の内容」の通りでした。
この活動現場で、「ビハーラ活動養成研修会」が有効であったかと尋ねると、84%の人が「有効であった」としています。また「有効でなかった」を選択した人はありませんでした。
(2009年「第13回ビハーラ活動全国集会」アンケート調査結果)
このようなビハーラ活動を実践する中で、どのような「キーワード」を大切にしているか、25項目あげて尋ねました(複数選択を可としました)。
1.傾聴78名
2.共に77名
3.ふれあい60名
4. 共感51名
5. 相手の身になる43名
6. 学び32名
7. よろこび28名
8. 熱意22名
9. 理解21名
10. 報恩行18名
11. 老苦12名
11.努力12名
13. 苦悩11名
13. 交流11名
15. 病苦10名
15. 現実10名
17. 死苦9名
17. 教え9名
19. 親切8名
20. 伝道4名
21. 布教3名・務め3名*その他7名
以上のようなキーワードを、それぞれに大切にしながら関わっている人たちは、具体的に「ビハーラ活動記録」を書いているでしょうか。これはビハーラ10年を終えて、次のステップアップには欠かせない事柄として、中央で「ビハーラ活動の記録書」を2種類作成し、養成研修でもトレーニングしてきたものです。これは内部にとっても外部発信するにしても、ミーティング、カンフアレンス、報告、発表、研究、統計等のため必要不可欠としてきた事柄です。
また、ビハーラ活動の理論構築のため、また学術的水準の高いビハーラ考究をすすめるため、社会的に信用を高めるためにも、「ビハーラ学会」の立ち上げが話題に出されたこともありました。そうした将来性を考えるとき、記録類の集約は、必要と考えられていました。
しかしアンケートの回答は、
「記録を書いている」 47名
「記録を書いていない」 70名
でした。書いている人の内訳は、
1.ビハーラ会員で共有している 19名
2.記録を病院・施設に提出している 15名
3.ミーティング・研究会で共有している 8名
4.その他 5名
5.記入なし 5名
となっています。
書いてない人の内訳は、
1.その他 22名
2.個人情報にあたるから 10名
3.記入なし 9名
4.記入項目が分からないから 9名
5.不要だから 8名
6.面倒だから 6名
7.忙しいから 6名
となっています。この実情を踏まえて、養成研修の修了時までに、きっちりその任にあたる人によって克服されるよう期待されるところです。また、教区ビハーラや教区内ビハーラでもこの記録を取ることの意義を理解し、その困難性を克服することが必要でしょう。
かつて書籍「ビハーラ活動」が発行されたとき、その次に社会発信のため「ビハーラ実践事例集」の発行について論議されました。それはこの「実践記録書」や「実践事例報告」の発表記録の集約で、目的が達成する道筋ができます。