これからのビハーラ活動が成長期・収穫期となるにはどのようなことが必要でしょうか。ここまで総括をしてきましたが、主として様々な統計やアンケートを用いてトータルな傾向を見てきました。人によっては、ビハーラ活動は統計や数字になじまないという声も聞きます。その意味で、一人の活動をトレースしたり、一つの項目をビハーラの現場として見ていくことも大切ですが、そうしたミニマムな視点から総括することは、別の機会に譲りたいと思います。
ここまでの総括をもとに、これからのビハーラの取り組む事柄はどういう問題があるか、5点ピックアップいたします。
①ビハーラ活動の拡大と深化を基本に取り組む
ビハーラ活動で常に浮上する問題は、会員の高齢化、現場の要請に応えられる会員がいない、いつも決まった人たちで周りの寺院の理解がなく参加してもらえないといったことがあります。確かに活動者の増強、人材の養成、実践場所の拡大は急がなければなりません。新たに教区内ビハーラが多く生まれている現状からは、教区ビハーラと密接な連携が望まれます。
これまでのビハーラ活動を見ますと、活動領域も、活動方法も活動人材も様々でした。それだけに多方面にわたって、臨床から学んだものも多くあります。そこにはクライエントの表現を活発化・深化させていくスパイラル・レスポンス(らせん反応)から学んだことも多いはずです。それらを見える形で提示していく作業が必要になってきています。
②ビハーラ活動に有効な啓発を進める
時間や場所を問わずビハーラ活動を知るあらゆる機会をえて、必要な視覚聴覚に訴える資料の作成と有効活用が大切になっています。魅力的なビハーラのホームページ作りもその一つでしょう。振り向いてもらえる内容物、ビハーラに参加したいという欲求を呼びおこす内容物、よく理解してもらえる内容物、もっているものを解決してもらえる内容物、行動を呼び起こす内容物などが考えられます。その手法は現代の様々な伝達物を利用すべきでしょう。ビハーラの活動レベルに応じたDVD作成なども考えられます。
③機能的に人材養成を進める
活動者育成のすべてを現在の「ビハーラ活動者養成研修会」で行うことには無理があり、組や教区ですすめることのできるモデルカリキュラムの提示も必要です。
現在、養成研修を終えても教区ビハーラとリンクされていない例が出てきます。また養成研修修了者よりもビハーラ会員の少ない教区もあります。研修修了時に、はっきりこれからの行動についてガイダンスする必要があります。また、講師団どうしの打ち合わせ、全体的理解、習熟度の分析など講師団会議をもつて取り組む必要もあります。
④情報の収集と提供をしていく
ビハーラ活動の全国集会、連区研修会、教区研修、そしてビハーラのカンファレンスなど活動現場に近くなればなるほど、ケアの問題が出てきます。その出ている問題が、個人的発表の段階にとどまり、集約される作業がまだできていません。
活動者一人ひとりが現場でビハーラ活動者としてのケアの体験をもっています。活動記録が集約されるなかで、生まれるものもあるのではないでしょうか。
⑤教区ビハーラの充実をはかり、教区内のビハーラの連携を強化する
ビハーラの組織的重心は、教区ビハーラにあります。そのためには教区内のビハーラはもちろん会員の動向も常に掌握しておかなければなりません。また、教区代表者とコーディネーター役と教区専従員は、最も密接に連携をすることが望まれています。
なお、中央では当初養成研修会を修了した人を対象に、ビハーラ研究会の会員制度もありましたが、教区会員と中央の限られた会員と一致しないために不都合を生じ取りやめになっています。
今後、教区会員をベースに全国のビハーラ会員という形を形成するかどうか、時宜を得て検討する課題です。