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8.まとめ―今後の発展のために (1)状況の変化のなかで

現代社会の変化は急激で、ビハーラ活動に取り組んだ周囲の状況、教団の取り組み状況など大きく変化しております。
その間ビハーラ活動の当初は、「萌芽の10年」といわれました。その後の10年は、葉や茎の伸びと手入れで「伸長の10年」ということになります。
「ビハーラ」という用語を、仏教者が生老病死を前に苦悩する人々に寄り添って活動をする、という共通理解をもって取り組むことになりました。私たちも先行されていたこの呼び名に呼応して、具体的に仏教ケア・臨床ケアを実践の中で可能にするよう、第1期・第2期・第3期と養成をはじめ、そして実践活動に励んできました。
いざスタートすると最初のニュース性や興味性と違って、内にも外にも厳しい意見が噴出してきました。
「社会に広げる必要がない。僧侶や門信徒対象だけの活動でよい」
「社会活動はあとのことで、大事なのは仏参や聞法だ」
「葬式や法事本位の仏教が、なぜ医療や福祉にかかわる活動をするのか、まったく理解しがたい」
「病人のところへ執拗にやってくる新興宗教に困ってきた。一つの宗派だけに活動を許可することはできない。ここは仏教の伝道場所ではない」
このような主張や誤解・偏見が内外に多くあって、地道に取り組んで一点突破、そしてビハーラ仲間を増やしながら活動の歩みを進めてきました。
そこでピラミッド論で、基礎部分には広く家庭・寺院・病院・福祉施設で老病死の苦悩に関わる活動をし、世の信頼を得、そのベースにのっとって、頭頂部分には人間成就期ともいうべきターミナル(終末)の時期に在宅・病院・福祉施設で関わる活動をしていくという理解をもったことでした。

やがて、WHO(世界保健機構)も健康について一つの方向性を打ち出し、世界の共通の理解に供しました。健康の対極には、苦痛がありそれぞれにケアがあることになります。分野として、身体的分野・社会的分野・心理的分野があるとされてきましたが、近年スピリチュアルな分野が必要と認められ、日本では、「霊的」「実存的」「宗教的」と様々に翻訳されています。


 

全人的痛み(ケア)

緩和ケアにおけるケアの上に欠かせない事柄として、「全人的ケア」すなわち身体にかかわる部分だけを切り離すのではなくて、人間を全体的・人格的生活体として考え、本人の痛みに相応したケアを行うことになります。
欧米のように病院が宗派立で、入院しても信仰が生き続けている人たちのいるところではホスピスが発達しましたが、日本の場合は高次の精神性の貧困ひいては宗教ケアの貧困と分析(「生命倫理事典」太陽出版より)されています。
このような貧困に対し取り組む課題は大小様々にあり、またそれだけにビハーラ活動への期待度が高いといえます。ビハーラ会員は、自分たちの活動の今後をどのように思っているでしょうか。


(ビハーラ活動10年総括書より)


(2007年度調査時)

ここ10年間で「先細り」を懸念する人は少なくなり、「ますます発展する」と感じる人が多くなっています。宗門内も社会全体も、認知度・期待度が上がったといえましょう。

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